
じゃがいもは比較的丈夫な野菜として知られていますが、葉や茎に病害虫が発生しやすい側面も持っています。
「消毒は本当に必要なのか」「無農薬でも問題なく育つのか」と悩む方は少なくありません。
結論から言えば、どちらの考え方にもそれなりの根拠があり、栽培規模や目的、環境によって答えは変わってきます。
じゃがいも栽培で起こりやすい病害虫
じゃがいもの葉や茎に発生する主な病気としては、疫病、モザイク病、軟腐病、黒あざ病などが挙げられます。
なかでも疫病は特に注意が必要で、葉に暗緑色のぬれた病斑が扇状に広がり、葉の裏に霜のような白いカビが発生します。
降雨が続くと畑一面に広がってしまうこともあります。
モザイク病はウイルスによる病気で、葉が奇形になったり、モザイク状のまだら模様や黒い病斑が現れたりします。
発生原因は種イモの汁、発病株の汁、アブラムシによる媒介の3パターンです。
害虫被害としては、アブラムシが大量発生して葉をべとべとにし、モザイク病やすす病を媒介することがあります。
また、テントウムシダマシは幼虫も成虫も主に葉の裏に住み着いて食害を行います。
これらの害虫は放置するとどんどん広がるため、早期発見と早期対処が栽培成功の鍵となります。
消毒するメリットとデメリット
消毒を行う最大のメリットは、病害の拡大を食い止められることです。
とくに疫病は発生してから蔓延までのスピードが速く、発生後の防除が非常に難しいため、予防的に薬剤を使用することが推奨されています。
軟腐病については、葉が生い茂る7月ごろから発生リスクが高まり、畑のどこかで発症すると土の中を水と一緒に細菌が流れるなどして、あっという間に全体へ広がってしまいます。
この病気から守るためには、予防を徹底するしかないのが現状です。
このように、一度蔓延してしまうと手の打ちようがなくなる病害に対しては、消毒による予防が収量を守る上で大きな意味を持ちます。
一方でデメリットも存在します。
農薬を繰り返し使用することで薬剤耐性を持つ菌が出現するリスクがあります。
同じ系統の薬剤を多用すると耐性を発達させた菌が出てくる場合があり、効果が感じられなくなることもあります。
また、農薬の取り扱いや散布には一定の手間とコストがかかるうえ、食の安全への意識が高まる中で農薬の使用を避けたいと考える生産者や消費者も増えています。
無農薬でも栽培できるのか
結論から言えば、条件が整えば無農薬でも十分に栽培できます。
農家の中には父の代から30年近くじゃがいもを栽培してきたが、一度も農薬を使用していないという例もあります。
土のバランスや微生物のバランスが良い畑なら栽培は可能です。
ただし無農薬で育てるためには、土づくりや管理に相当な手間と注意が必要です。
農薬を使用しない場合は、種イモに病気がないかをしっかり精査し、繁殖が確認された場合は被害が拡大しないように疑わしい株を早期に撤去し、排水性を良くするなど環境面での発症予防に細心の注意が必要です。
また、農薬を使用しない疫病への防除法としては、植物残渣の処理や太陽熱消毒による土壌消毒が有効です。
前作の植物や枯れた葉に疫病が付着している可能性があるので残渣を土壌に漉き込まず、圃場外に持ち出して処理するようにしましょう。
コンパニオンプランツとしてマリーゴールドやネギ類を一緒に植えることで、センチュウなどの害虫や病原菌を寄せ付けない効果も期待できます。
小規模な家庭菜園であれば、こうした農薬に頼らない対策を組み合わせることで、十分に収穫を楽しめます。
消毒に使う薬剤の選び方
消毒を行う場合、病害の種類に応じた薬剤を選ぶことが大切です。
疫病対策として広く使われているのがダコニール1000(有効成分:TPN)で、予防的散布に効果があり、7〜10日おきの散布が推奨されています。多くの病害に登録があるため、同時防除が可能です。
疫病の薬剤防除に登録されている薬剤としては、ザンプロDMフロアブル、ジマンダイセン・ペンコゼブ水和剤、銅水和剤、ダコニール1000、フォリオゴールド、ランマンフロアブルなどが挙げられます。
多雨の年には散布間隔を短くし、降雨前後にも散布することが指導されています。
軟腐病対策には銅殺菌剤が有効とされており、コサイド3000は銅殺菌剤で、散布すると銅成分が葉の表面に付着し、降雨などで葉が濡れることによって銅イオンを放出して作物を感染から守ります。
薬剤を使う際の注意点として、耐性菌の問題があります。
同じ薬剤を使い続けると効果が落ちることがあるため、作用機構の異なる薬剤をローテーションして使うことが推奨されます。
また、使用前には必ずラベルを確認し、じゃがいも(ばれいしょ)への登録があること、使用回数の上限を超えないことを確認してください。
ばれいしょとは、じゃがいものことで漢字では「馬鈴薯」と書き、農業・行政・学術の分野では「ばれいしょ」という呼び名が正式名称として使われています。
消毒のタイミングと時期
薬剤散布で最も重要なのは「発病してから慌てて撒く」のではなく、発生前からの予防散布という考え方です。
ばれいしょの開花期は多雨時期に重なりやすく、雨天が続くと病勢が増し、数日で圃場全体に蔓延することがあります。
そのため、栽培初期からの予防が重要です。
具体的なタイミングとしては、開花期ごろから7〜10日おきに薬剤を散布するのが基本で、多雨の年には散布間隔を短くし、降雨前や降雨後にも散布することが推奨されています。
散布の時間帯については、葉が乾いた状態の午前中が適しています。
一般的に農薬を散布して薬液が乾いた後、6時間(理想的には一晩)以上経過していれば、その後の降雨で薬剤が流されることはほとんどありません。
逆に言えば、散布後すぐに雨が降るような状況は避けた方が良く、天気予報を確認してから散布するのが賢明です。
また、殺菌剤は基本的に予防効果を発揮するものが多いため、べと病の多発時期には降雨の前後、それ以外の時期には降雨の前に行うのが理想的で、薬剤は葉の裏にも十分に付着するよう散布することが重要です。
葉の裏側は特に病原菌の侵入口となりやすいため、散布の際には裏面を意識して丁寧に行うことが防除効果を高めることにつながります。