
じゃがいもの土づくりにおいて、「苦土石灰を入れるべきか、入れないべきか」という話題は、家庭菜園愛好家のあいだでもよく議論になるテーマです。
野菜栽培の入門書を開けば「植え付け前に苦土石灰を施しましょう」と書かれていることも多いですが、じゃがいもに関しては少し事情が違います。
この点をきちんと理解しておかないとせっかくの手間が逆効果になることもあります。
じゃがいもが好む土壌のpHについて
まず大前提として、じゃがいもは弱酸性の土壌を好み、生育に適したpH値はおよそ5.0〜6.0とされています。
これは多くの野菜が中性から弱酸性を好む(pH6.0〜6.5前後)のと比べるとやや酸性寄りの範囲です。
pH値が低すぎると萌芽不良につながる一方、高すぎるとそうか病のリスクが発生します。
このことからもじゃがいも栽培において土壌酸度の管理は非常に重要な意味を持っています。
苦土石灰とはどういうものか
苦土石灰はドロマイトという鉱物を砕いて作られており、カルシウムとマグネシウムを含んでいます。
根や茎を強くする働きがあるとされていますが、土に馴染むまで数週間かかります。
石灰類の中では比較的穏やかなアルカリ化作用を持ちますが、それでも土壌のpHを上昇させる力は持っています。
なぜじゃがいもに使われることがあるのか
本来は酸性土壌の改良を目的として用いられます。
土壌酸度を測定してpH5.0以下の場合は苦土石灰を1㎡あたり100g、pH5.0〜6.0の場合は微量要素の補給のために50g程度散布し、pH6.0以上の場合は苦土石灰をまく必要はないとされています。
つまり、苦土石灰はすべての畑に一律に使うものではなく、あくまで土壌が酸性に傾きすぎている場合の修正手段として位置づけるのが正しい考え方です。
苦土石灰に含まれるマグネシウムは植物の光合成を助ける栄養素であり、不足すると植物の生育に支障をきたします。
この栄養補給を目的として施用されることもあります。
じゃがいもにとってもカルシウムやマグネシウムは生育に必要な成分であり、土壌にそれらが不足している場合には補給の意義があります。
苦土石灰の使いすぎが招くリスク
問題になるのは、必要以上に苦土石灰を投入した場合です。
土壌がpH6.5以上になると石灰質資材を多用した結果としてそうか病が多発しやすくなります。
そうか病とはじゃがいもの表面にかさぶた状の病斑が生じる病害で、外観が著しく損なわれるうえ、ひどい場合は品質そのものに影響します。
アルカリ性に傾いた土で育てると途中までは順調に育っていたのに草丈15cmほどから生育が止まるケースもあります。
また収穫に至ったとしても新しいイモの発生がほとんどなかったり、肥大が見られない場合もあります。
さらに、土を強アルカリにしてしまうとさまざまな栄養分が土の中で溶けにくくなってしまいます。
栄養分は水に溶けてから植物に吸収されるため、強アルカリ状態では栄養が効きにくくなり、生育が悪くなります。
苦土石灰なしでも大丈夫なのか
結論からいえば、土壌のpHが適正範囲(pH5.0〜6.0)に収まっているなら、苦土石灰を使わなくても問題ありません。
長年栽培している場所は、前作の時に酸度調整のため石灰を加えている場合も多いので、無理に石灰を加える必要はありません。
土壌pHがアルカリに寄ることがそうか病を助長するため、前作の残りの石灰分で十分と判断されるケースも多くあります。
ただし、まったく石灰分がない状態ではじゃがいものほくほく感が出にくいとも言われています。
このため、カルシウム補給の目的では、pHを上げにくい硫酸カルシウム系の資材を選ぶという選択肢もあります。
同じカルシウム化合物でも硝酸カルシウムや硫酸カルシウムはアルカリ性ではないため、そうか病のリスクを高めずにカルシウムを補給できるとされています。
実践的な判断のポイント
いちばん確実なのは、植え付け前に土壌のpHを測定することです。
酸度計や試験紙、試薬などを使えば比較的簡単に計測できます。
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測定値をもとに判断すれば、苦土石灰を入れるべきかどうか迷う必要はなくなります。
pH5.0よりも低い場合や6.0を超える場合は土壌酸度の調整が必要になります。
植え付けの2週間前に苦土石灰や有機石灰を入れて調整するのが望ましく、石灰の入れすぎでpH値が高くなりすぎないよう注意しながら進めましょう。
また、そうか病対策としてアルカリ性にする資材と酸性にする資材を両方使ってしまうと土のpHが中性域になってそうか病菌が活動しやすいpHになってしまうため避けるべきです。
対策の方向性をひとつに絞ることが肝心です。
要するに苦土石灰はじゃがいも栽培において「使ってはいけない資材」というわけではなく、「土壌の状態を確認してから、必要な場合にのみ適量を使う資材」と理解するのが正確です。
畑ごとに土壌の状態は異なりますので、一概に「必要」「不要」と決めてしまわず、pHの測定を習慣にすることが、安定したじゃがいも栽培への近道といえるでしょう。