
トマトを育てているとつくづく感じるのが、日光に対するこの植物のこだわりの強さです。
家庭菜園でも農業でも、日当たりの違いだけで結果がまるで変わってくることがあり、日照はトマト栽培の根幹ともいえる要素です。
トマト栽培に日照は大事
トマトの原産地は南米アンデス高原地帯で、太陽が強く照り、空気が乾燥し、昼夜の温度差が大きく、水はけの良い土壌が特徴です。
この環境こそがトマトの性質を形づくってきました。
強い日差しのもとで育ってきた植物ですから、日照への要求が高いのは当然のことといえます。
トマトに必要な光の強さ(光飽和点と光補償点)
光の強さという観点から見るとトマトの特性はとても明確です。
野菜の中ではスイカとサトイモに続いて強い光を必要とする植物で、光補償点は1.5キロルクス、光飽和点は70キロルクスとされています。
光補償点とは、光合成の速度と呼吸の速度がちょうど釣り合う光の強さのことで、これを下回ると植物は生産よりも消耗が上回ってしまいます。
一方の光飽和点は、それ以上光を当てても光合成が速くならなくなる上限の値です。
一般的に太陽光は50,000〜100,000ルクス、曇天でも10,000ルクス程度の照度がありますから、トマトは太陽が大好きな植物であることがよくわかります。
光飽和点と光補償点の数値から何がわかるかというと、弱い光でも生育が可能だが光飽和点が高いため、日照の強さによって生長速度にバラツキがあると考えられます。
このことは果実品質に影響が及びやすいということであり、日照不足によって引き起こされる生理障害がトマト果実に悪影響を与える一因となっています。
かろうじて生きてはいられても、しっかりと実をつけておいしいトマトを育てるには、十分な光量が欠かせないということです。
1日に必要な日照時間の目安
日照時間についても、明確な目安があります。
6時間以上の直射日光が欠かせません。
家庭菜園やベランダ栽培でよく「半日陰でも育った」という声を聞くことがありますが、それはあくまでも生育できたというだけであって、収量や品質という面では大きな差が出てきます。
特に実をしっかり太らせ、糖度を上げていくためには、できるだけ長い時間、直射日光が当たる環境が理想的です。
また、トマトは中性植物でもあるため、花芽の影響を受けることがありません。
従って極端にいえば光を当てれば当てるほど光合成を行い成長するというメリットがあります。
日長によって花芽がつくかどうかが左右される短日植物や長日植物とは異なり、トマトは日照時間の長短に左右されず花を咲かせます。
これはトマト栽培において非常に有利な特性で、季節を問わず施設栽培がしやすい理由のひとつでもあります。
強すぎる日射には注意が必要
ただし、強い日射が常にプラスに働くわけではありません。
強日射によるハウス内温度の上昇と高温障害の発生が考えられます。
トマトの栽培では、生育の好適温度範囲の他に、花粉の発生や受粉の限界温度があるため、特に高温期には収量に影響が生じやすいといえます。
真夏の強い日差しが続くと、温度が上がりすぎて受粉がうまくいかなくなることがあるのです。
葉の大きさとトマトの光への欲求
葉の構造という点から見ても、トマトの日照への欲求は興味深いものがあります。
本葉は主茎や果房に対して非常に葉面積が大きく、これはトマトが光合成を行うため光を求めて形態的に進化してきた特徴であり、それだけ多くの日照を求めているからです。
しかし、この大きな葉はお互いが重なり合うことで光合成を不効率にしています。
トマトはより多くの光を集めようとして大きな葉を展開しますが、株が茂りすぎると今度はその葉同士が影を作り合い、自ら日照不足を招いてしまうという皮肉な状況が生まれます。
これが、適切な整枝や下葉かきが重要視される理由のひとつです。
日照と果実の色づき・糖度の関係
日照は果実の色づきとも密接に関係しています。
赤くなるには、日数と日照、特に温度が深く関係しています。
積算温度とは、収穫までに必要な合計の温度のことで、トマトは収穫までの合計が800〜1000℃になった頃に赤く色づきます。
日照がしっかり確保されれば温度も上がりやすく、積算温度も効率よく積み上がっていきます。
曇りの日が続くと色づきが遅れたり、味が乗らなかったりするのは、こうしたメカニズムが背景にあります。
日照不足が引き起こす複合的な悪影響
日照不足が続いた場合の影響は、見た目の問題だけにとどまりません。
日照が不足すると徒長(茎や葉が必要以上に伸びること)したり、結実や果実肥大が悪くなります。
さらに、長雨や曇天続きの天候によって引き起こされる日照不足には低温を伴うことがあります。
これらの条件には湿度の増加も加わってくるためトマトに対する悪条件(低温・日照不足・多湿)が益々増えてくることになってしまいます。
梅雨の時期にトマトの調子が崩れやすいのは、まさにこの複合的な悪条件が重なるためです。